日本語習得

2013年4月11日

 

言語習得

子供たちや保護者の皆さんと教育現場で長く接してきた経験から、日本語習得への具体的なアドバイスを差し上げたいと思います。

言語の習得には①家庭環境、学習環境、③社会的環境の3つの環境が大きく影響します。下記は日本語を習得するための具体的なアドバイスです。ご家庭の事情に合わせてご利用ください。



家庭環境を充実させる 

家庭での会話はすべて日本語で行い、母語の「生活言語」を育てる。保護者のどちらか一人が日本人の場合、保護者が子供に英語でも話すようになると、子供の日本語力はあっという間に落ちていきます。


 会話をする場合には、できるだけ代名詞や省略した表現を避け、フルセンテンスで会話するように心がける。子供の日本語がたどたどしくても、途中から話をとったりせずに、忍耐強くじっくりと話を聞いてあげてください。


日本語で読み聞かせを行う。少なくとも15分、できれば30分。大妻女子大学の「堀洋道研究室」の研究によれば、読み聞かせは、①他者の気持ちへの敏感性、②気持ちを言葉で表すこと、③語彙の増加、④リーダーシップ、④友人の多さ、⑤忍耐力を育てる、と関係があります。言語習得以上の効果が期待できます。子供が日本文化を自然に吸収する機会にもなります。(特に小さなお子さんは膝に抱っこして読んであげてください。慣れない海外生活で不安定な精神状態が落ち着くことでしょう。)読み聞かせは幼児だけのものではありません。小・中学生になっても保護者が本の読み聞かせをするのは良いアイデアだと思います。その場合、子供が自分では読めないが、聞けばわかる程度の本が最適です。内容によっては、新聞記事を読むのも良いでしょう。日本社会とその動きを知ることにもなります。 

 

学習環境を充実させる 

●日本語を使った学習環境(幼稚園、補習授業校など)に入れる。アメリカに赴任してくると、保護者は子供の英語をまず心配されます。しかし、英語環境の中で一日のほとんどの時間を過ごす子供は、遅かれ早かれ英語力を身につけていきます。むしろ日本語こそ努力しなければ、維持できないし、伸ばしていくことも難しいのです。


幼稚園・・・子供の言語発達(母語の「学習言語」)、文化継承、社会性の育成を促進します。「英語学習を重視しすぎたために、帰国後どちらの言語も習得が不十分で深刻な問題を抱えている小さな子供たちが増えている」 と、帰国子女教育振興財団の相談員の方々から聞いています。幼少期を長く海外で過ごすと日本語の単語は知っていても意味がわからないということが起こります。すると、帰国後、成長とともに本が読めなくなり、学習障害に至 る例もあります。海外に住んでいるからこそ、しっかりした日本語の基礎を身に付けさせる環境を整えてあげるとよいのです。保護者も子供も安心して帰国することができます。渡米間もない場合には精神的な安定のためにも、ま ずは日本人の子供グループに入れてください。子供の憩いの場所となることでしょう。

 

保護者のどちらか一人が日本人の場合、できるだけ子供が小さい内に、5歳よりは4歳、4歳よりは3歳の時のほうが効果的です。本校では、3歳児で日本語がおぼつかないまま入園した子供が、中学部の卒業時には長い送辞を暗記 し、クラスを代表して立派にその務めを果たしたという例もあります。小学校入学前までに日本語でしっかりした会話ができると、日本語の学校でも力をつけやすいです。

 

小・中学校・・・学校はアメリカにある小さな日本人社会であり、子供たちはそこで日本語と日本の文化を身につけることができます。そこで年齢にふさわしい日本語力を保持するよう努力すれば、帰国後の適応がスムースであ り、日本人としてのアイデンティティーと世界で通用する英語力を持ち、異文化を理解する人物となることができます。小学校中学年以上では、言語で物事を考える力を養うことが大切な時期となります。従って、日本語で考える 力を育てる方が得策です。(子供が英語で深く考えられるようになるまでには相当時間がかかります。)子供の日本語力を充実させましょう。日本語の力が充実している児童・生徒は、英語の習得も容易になります。何故なら、日 本語で理解している概念は英単語さえ覚えてしまえば、英語でも理解できるからです。日本語の読解力や理解力を英語にも生かせます。


●毎日日本語にふれる学習環境を整える。短くても毎日勉強することが日本語力を充実させます。


●補習授業校の国語の授業や宿題、また読書で読解力を伸ばす。小・中学生には日本語の本をたくさん読んでもらいたいものです。手軽に日本語の本に手を伸ばせる環境が必要でしょう。漫画の学習本でも結構力が付きます。


●一時帰国(夏休み等を利用して)したときに日本の学校に体験入学をする。「数週間の滞在で子供がずいぶん日本語を覚え、流暢に話すようになって帰ってきた」と保護者からよく伺います。「日本語も英語もできる自分は特別だ」という、バイリンガルである自分の価値を発見した事例もたくさん見てきました。結果的に、日本語を勉強する意欲が高まるようです。また、日本語を学習する意義に自ら気づく可能性も出てきます。 

 

社会的環境を充実させる 

●日本語を使うプレーグループに参加する。 言語とともに日本人としての協調性・社会性が養われます。

 

●日本語を使う家族と家族ぐるみでつきあう。 日本語に対する感謝、日本語を使う楽しさ等を再認識できます。


●日本語を目にする耳にする環境を充実させる。(日本語のケーブルチャンネルをとる、新聞、ビデオや雑誌、本、音楽など身近なところで日本語にすぐふれられる環境を用意する。) 興味、関心がグッと高まります。 

 

子供は自分で教育環境を選ぶことができません。保護者の賢明な判断、励ましと協力などで子供の日本語力は育っていくと言っても過言ではありません。