子供にとっての秘密

2014年9月29日

児童文学の古典に、バーネットの「秘密の花園」があります。子供にとって秘密の存在がどれだけ大切かを物語っています。三人の少年少女がこころを合わせて、どんなことがあっても「秘密の花園」を守り抜こうと、庭の世話を続けるというお話です。子供が成長し、傷ついた心が癒されていく過程において、秘密を持つことがとても重要だということが示されています。しかし、その秘密は、育てられ、親しい人と共有され、最後には全ての人の前で開示され、発展していきます。その経過が見事に物語として結晶しています。

 
秘密を持つということは、「これは私だけが知っている」ということであり、「私」の独自性を証明するものに他なりません。従って、秘密は、少年少女のアイデンティティと深く関わってきます。何を持っている、どこの家の子、どの学校に通っている、お父さんは何をしている・・などは、全て与えられたもので、自分で作り出してものではありません。私しか知らない秘密は、他人に依存していないので、自分のアイデンティティとしては最高の物と言えるでしょう。


秘密の心理を研究した小此木圭吾は、「秘密は対人関係を決める」と述べています。秘密の種類、持ち方によって、他人との距離が決まります。従って、「私しかしらない秘密」を持つことは、アイデンティティの確立に繋がる一方、孤立へと向かう可能性もあります。


秘密はいつまでも自分だけのものにしていたい気持ちと、誰かと共有したい気持ちの戦いがいずれ始まります。しかし、秘密には人に話しても脅威にならないもの・健康的なもの(秘密の花園)と、そうでないものがあります。自分の欠点や弱点、体の欠陥、出生にまつわる秘密等々、重い秘密があります。それらの秘密を守り抜くために、人は多量のエネルギーを使い、他者と距離を感じたり、感じさせたりしています。こういう秘密を背負わされた子供は計り知れない苦労を背負い込むことになります。


「大様の耳はロバの耳」というお話があります。王様は人に知られたくない耳の欠陥の為に人殺しさえします。しかし、ある床屋の言葉から心の変化が起こり、殺すのを止めます。自分の秘密が国中に広がっていることを知ったとき、それが「柳の木のそよぎ」によって広まったことを知って、自然の力には抗えないことを悟ります。王様のこのような態度の変化に接して、国民は王の秘密を知ったにも関わらず、王を敬愛するようになります。人間は自分の大きな欠点が人に知られても、必ずしもそれによって人から軽蔑を受けるとは限らないことを、このお話は教えています。王の欠点がむしろ国民の親愛の情を引き出す通路となったのです。人に語りえない重い秘密を持った子供がいます。安易な秘密の公開はナンセンスですが、自分も努力し、時が熟すならば、その秘密が大きな祝福と変わるときが来るのです。


子供たちが自分の秘密を教えてくれるのは素晴らしいことです。秘密が子供たちの心を育てていることを意識したいものです。また人に語れない深刻な秘密を抱えている子供も世の中にはたくさんいます。成長し、やがてそれを信頼する人に語ることが出来、人々から受け入れられていく日が来ることを願ってやみません。