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2023年度 学校通信11月号

更新日:11月20日

 私が最近読んだ教育関連の記事に目が止まりました。「甘やかす」ことと「甘えさせる」ことは違うというのです。突然ねだってきたものを親の気分次第でまわりに迷惑をかけてまで子供の物欲や独占欲を満たそうとすることが、「甘やかす」ことだ


そうで、それはわがままを育てることになってしまうようです。しかしそれに対して、「甘えさせる」ことは、子どもの要求をすべて飲むこととは違い、子どもの心を満たす行為だそうです。「抱っこしてほしい」「絵本を読んでほしい」「手伝ってほしい」「話を聞いてほしい」などの親との関わりを求める欲求を叶えることで、子どもに親の愛情が伝わり、子どもの心が満たされ、感謝の気持ちや人に対


する優しさが育ち、子どもが自立してゆきます。「こういった欲求については、何歳になっても応じていいのです。そのせいでわがままな子に育つことはありません。」と筆者の高松ますみさんはおっしゃいます。さらに高松さんは甘えさせる3つのメリットを次のように挙げていました。


•自分の弱さを見せられる安心感から親を信頼できるようになり、情緒が安定する。

•人の弱さを理解することで、まわりの人の甘えも受け入れられ、優しく育つ。

•「自分は無条件で愛されている」という自己肯定感が高まり、意欲が湧く。


 私は昔、あえて厳しく子どもに接しなければ子どもは自立しないと心のどこかで思っていました。でもそういった私の行動は


、むしろ子どもにとって親を遠い存在に置いてしまい、親の期待に応えて自立しているように見えていたかもしれませんが、実は寂しい孤立した気持ちを我慢させ、仕方なく「いい子」を演じさせていたのかもしれません。

「普段から可能なときにはしっかりと甘えたい気持ちを受け止めて、心を満たしてあげていれば、信頼関係が築かれていくので、我慢しなければならない状況だとわかったときには、だだをこねることがなくなります。」と前述の高松さんは書いておられます。


 「いつまでも宿題に付き合っていては子どもの自立にならないのではないだろうか?」いいえ、いつまでも付き合ってあげてください。子どもが自ら親の手を離すまでは、しっかりと握っていてあげてください。子どもから手を離す瞬間が寂しいからといって(親としては認めたくないかもしれませんが)


親の方から手を離さないであげてください。その寂しさに堪えられるのは、しっかりと「甘やかせ」てあげられた親だけのような気がいたします。

前述のように、私は決して良い親ではなかったと自覚しています。しかし、子どもが高校の途中から自ら選んでカナダの全寮制の高校に転校していった日のことを今でも思い出します。朝早くまだ明るくなる前に空港まで見送り、家に帰ってきてから妻と二人で泣きました。もしかすると、大学に行く年齢の子どもをもつ親なら誰しもが体験することかもしれませんね。もちろん寂しさもありましたが、それと同時にどこか自分で進路を決めていった子どもが誇らしい気持ちも混ざっていたような気がします。


 今は幼い子どもたちもあっという間に旅立ちの年齢を迎えます。それまでどうぞ、しっかりと甘えさせてあげてください。それは時には面倒に感じることでしょうし、そんな時間を割くことができない時も現


実にはあるでしょう。そんなときは、「自分でそのくらいできるでしょ?」「だから早くしなさいって言ったでしょ。」と怒鳴るかわりに、数秒子どもの甘えたい気持ちを受け止めることができたらと思います。


 ここ数日でめっきりと気温が下がり、サマータイムももうすぐ終わります。暖かさが恋しくなる季節に、各ご家庭でほっこり暖かくなる親子の時間が育まれることを願っております。 


                  園長・校長 前川英樹

 (学校通信2023年11月号 より)

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